プロダクションノート

 “パーフェクトブルー”の実写化の企画が持ち込まれたのは約2年前の事。初めは アニメのイメージが強すぎて、実写化は正直、難しいと思っていた。しかし、“パー フェクトブルー”の原作の『夢なら醒めて』に流れる世界観は、アニメとは違うアプ ローチを可能にするものであった。本来、原作にある“男の哀”“女の性”の部分を 引き出していけば実写の面白みを出せる、すぐにサトウ監督に相談、了解を得た。サ トウトシキ作品に流れる世界観と原作に流れる世界観が似た匂いを持っていると、かっ てに解釈した結果だった。しかし、脚本化は難航し、半年後には映画化そのものが頓 挫するという状態に。納得できない脚本では進行できない。そこに、監督がピンクの 時にコンビを組んでいる脚本家の小林政広氏が助け舟を出してくれた。小林氏は自身 の監督作品がカンヌ映画祭からの招待を受け、また、制作活動に多忙な時期でもあっ たが、本作が厳しい状態である事を知っていてくれたのだ。
 脚本に登場してくる人間は、ごく普通の日常を平穏に過しているものばかり。特別 な悪意も善意もない生き方。しかし、彼らの底辺にながれている“男の哀”と“女の性”が人生を楽なものにはしてくれない。何かを信じていなければ生きていけない今の男たち、ある人には、それが会社であったり宗教だったりするのだが、物語の主人公にとって、それはアイドル。彼は信じるが故に現実と虚構の境界線を見失ってしまう。そしてアイドルであるが故に、その信じる対象となってしまう女の子。すれすれの不安定な境界線を人は生きているという脚本の世界観は、原作の世界観と監督の方向性が見事に融合したもので、起死回生のごとく、映画は転がり始めた。キャスティングは思いのほか順調だった。主演の前田綾花、大森南朋は我々のイメージ通りで即決。前田綾花の第一印象は、とにかく目に力があるところだった。しかも “スクリーンで映える”とスタッフ皆が確信した。大森は監督が一緒に組みたがっていた俳優、多忙な時期でスケジュールだけが心配だったが、運良くクリアーした。主演以外のキャスティングも全て思い通りに運び、無事クランク・インにこぎづけた。しかし、天候の問題や、思いがけないトラブルが続発、撮り上げるのに予定の2倍の期間を要してしまった。真冬にはじめた撮影が、いつのまにか春へと変わり、この企画がスタートして2年が過ぎようとしていた。