原作本『PERFECT BLUE 夢なら醒めて……』より

竹内義和

 実をいうと、この『夢なら醒めて……』は、まだ僕が小説家としては素人の頃に書 いた実験的な作品である。出版プロデュースを経て、コラムニストでデビューしたの が29才。そして、この作品を書き上げたのが、確か30才くらいだったと思う。
 正直興味深いのは、この正真正銘の第1作からすでにアイドルとストーカーの抜き 差しならない関係を物語の主題に据えているという事である。嗚呼、なんてことだと、 今読み返して改めて思った。第2作目となった『涙、あふれて……』、その次に執筆 した初の長編小説『パーフェクトブルー』もテーマとしては同じだった。4作目の 『君をこんなに抱きしめても……』もやっぱりそうだったし……。5作目の『シンプ ルレッド』で初めて、主人公がアイドルではなく、アニメーションの声優になったの だ。しかし、声優もアイドル同様、ストーカー的ファンから狙われてしまう要素を充 分担っている存在なのである。はてさて、どうして僕はこうもアイドルとストーカー の対立にこだわるのだろう?ひとつ考えられるのは、アイドルという存在そのものが、 ストーカー的なものを内包して成り立っていると僕が思っているからではないかとい う事だ。
 ここからは僕のアイドル論である。男にしろ、女にしろ、心のどこかしらにストー カーの要素がある。アイドルとは、誰もがもっているであろう、そんなストーカーの 要素を急激に増殖させてしまう触媒ではないのか。ある意味、マイナスなのかもしれ ないそのパワーがあるかないかが、アイドルであるかないかにつながっていくのでは、 と僕は考えているのである。だから、いくらスタッフが「この子は21世紀のアイドル ですよ」といって派手に売り出した子であっても、その子の中にそういったパワーが なければアイドルになり得ないし、逆に、料理番組のアシスタントであろうが、地方 局の女子アナウンサーであろうが、その子の中に秘めたパワーがあれば、その子は立 派なアイドルといえるのだ。
 さて、『夢なら醒めて……』は、冒頭でも書いたように、プロの小説家として発表 するつもりもなく書いた作品である。その頃つるんでいた仲間3人で、誰からともな く、「小説の書きっこをしてみないか」との声が出たのがそもそものキッカケだった のだ。創作活動に興味があった僕は即賛成し、きちんと締め切りを守り提出したのが この作品だったのである。それなりに満足感はあったが、いっても読者は2人。いさ さか物足りない思いをした記憶がある。が、結果的に『夢なら醒めて……』はこうし て単行本となった。しかも、本書の表紙は、世界的画家であるマーティロ・マヌキア ン画伯によるオリジナル作品なのである。それに加えて、今夏(2002年)には実写映 画として劇場公開されるのだから、読者が2人だけの状況とは雲泥の差になっている。  僕の作家としての原点であるこの作品の成長を、生みの親として心から喜びたいも のである。